ABBA Voyageとは何か? ロンドン現地視察で見えた“未来のコンサート”の正体

ロンドンで上演されているABBA Voyageを視察してきました!

2022年にスタートした”ABBA Voyage”は、AI&モーションキャプチャー技術で再現された全盛期のABBAメンバーと、生バンドが共に100分間のパフォーマンスを披露するコンサートです。

つまりABBA本人達は不在のコンサート!
とはいえ単なる“ホログラムライブ”ではなく、10人編成の生バンドと、
言われなければ誰も気づかないのでは?というほど精巧にデジタル化されたABBA
そしてこの公演の演出のために設計された専用アリーナ
一体化した、コンサートでもないミュージカルでもない新しいエンターテインメントでした。

公式サイトはこれを「a concert like no other(ほかにないコンサート)」と表現し、
レビューでも「pop’s future」「the future of music」と評価されており、
次はNYに専用劇場を立てることも決まっています。
新しいエンタメ×ビジネスの爆誕ですね!

1. ”ABBA Voyage”とは

”ABBA Voyage”(アバ ボヤージュ)は、1970年代半ばから1980年代初頭にかけて活躍した
スウェーデンの伝説的ポップグループABBAの4人を、
若き日の姿でデジタル再現した“ABBAター(ABBAtars)”が出演するロンドン常設公演です

東京に住む人には「武蔵小杉」や「北千住」などここ10年で開発されてきれいになったエリアの
一駅横に、「専用アリーナ」&「アリーナ専用駅」ができた、といえばいいでしょうか。
会場は東ロンドン、ロンドンスタジアムでおなじみストラトフォード駅から一駅のABBA Arena

この公演のために作られた約3,000人規模の六角形型の特設会場で、
1Fのダンスフロアと2Fの着席エリアが共存する構造になっています。
公演は約100分間で、10人編成の生バンドが全編を支えます。

このAbba Voyage は手厳しいロンドンの批評サイトでも評価が高く、
Time OutはABBA Voyageを「a spectacular vision of pop’s future」と評し、
Evening Standardは「this show really does look like the future of music」と書いています。
ABBA Voyageは“懐メロの再現ショー”ではなく、
ポップコンサートの未来像そのもの”としてメディア・来場者から受け止められています。

日本でABBAというと、「世界的ヒットを持つ往年のポップグループ」という理解になりがちです。
映画「マンマミーア」をはじめ日本でもお茶の間でABBAが流れる機会は他の洋楽アーティストよりも多く、もちろんそれも正しいのですが、英国でのABBAは想像以上に神に近い存在です。

ABBAのベスト盤『ABBA Gold』は、英国で史上2番目に売れたアルバムであり、
さらにOfficial Albums Chartで1000週到達という記録も持っています。
故エリザベス女王もABBAの代表曲「ダンシングクイーン」が大好きという有名エピソードまであり、
ABBAはイギリスにおいて、単なる“昔の人気グループ”ではなく、
若者からおばあちゃんまで一緒に歌うことができる世代を超えて共有される国民的グループです。

現地で感じたのは、日本での“洋楽レジェンド鑑賞”とは熱の種類が違うことでした。
私が受けた印象をあえて言語化すると、白人シニア層にとっての“歌える祈り”のようなものです。
厳密には「ゴスペル」ではありませんが、どの曲も誰もが口ずさめて、みんなで歌えばあの頃に戻れる。家族、青春、恋愛、週末のダンスフロア、テレビ、カーラジオ、結婚式、そうした生活の記憶とABBAの曲が結びついているように見えました。これはデータではなく、現地での体感です。ABBAが英国で長く愛され続ける理由は、ヒット曲の多さだけではなく、
“人生の記憶装置”として機能していることにあるのだと思います。

駅構内にオフィシャルグッズSHOPとチケットBOXが早速出現。
ABBA Voyageのために建てられた駅だから出来ること!

筆者が訪れたのは平日の夜公演でした。体感では白人客が約8割、年齢層は40代〜70代中心
若い観客もいますが、圧倒的に多かったのは“ABBAと一緒に年を重ねてきた”世代+90年代のリバイバル世代です。
そして印象的だったのが服装です。全身スパンコール、ラメ、キラキラのディスコルックの来場者が非常に多い!年齢を気にせず、普段すごい役職についてそうなシニアたちが、レインボーのシャツや、ハイビスカスのレイをつけたり派手な装いで楽しそうにしているだけで、最高です。

開演前から会場全体が明るく、客席を見るだけでも楽しい。ABBA Voyageは、着席して鑑賞するだけのショーではなく、行く前から参加型の祝祭として成立していました。

チケット価格

公式サイトによると、Seated ticketsは£39.70〜、Dance Floor ticketsは£56.20〜です。さらに16〜25歳向けのDance Floor £35も用意されています。価格は日程や在庫で変動しますが、早めの予約と平日公演が比較的取りやすいと公式に案内されています。誕生日用のグループチケットなど様々なチケットが季節ごとにでていて、マーケティングチームの優秀さが光ります。

ラウンジエリアで開演を待つ人達

アクセス

会場はQueen Elizabeth Olympic Park内のABBA Arena(Pudding Mill Lane, London E15 2RU)。最寄りはDLRのPudding Mill Lane駅で、公式案内では徒歩1分Stratford駅からは徒歩25分です。ロンドン中心部から行く場合は、Stratfordまで出てDLRに乗り換えるのがわかりやすい動線です。なお、公式は開演1時間前の到着を推奨しています。
お土産・ご飯エリア・BARエリアが充実しているので1時間あっという間にすぎますよ!

駅構内&Abba Voyage 内にもグッズショップあり。どれもデザインが可愛く危ない・・・!

現行セットリスト

2025年の3周年タイミングでセットリストが更新され、“When All Is Said and Done”が外れ、
新たに複数曲が追加されました。2026年時点の報道では、”The Name of the Game”“Money, Money, Money”は固定で入り、“Super Trouper”“Take a Chance on Me”は公演日によって入れ替わる形とされています。2026年ローカルサイトより拾ったセットリストは、以下の流れが多そうです。

2026年時点の代表的なセットリスト

  1. The Visitors
  2. Hole in Your Soul
  3. SOS
  4. Knowing Me, Knowing You
  5. Chiquitita
  6. Fernando
  7. Super Trouper または Take a Chance on Me
  8. Mamma Mia
  9. Does Your Mother Know
  10. Eagle
  11. Lay All Your Love on Me
  12. Summer Night City
  13. Gimme! Gimme! Gimme! (A Man After Midnight)
  14. Voulez-Vous
  15. The Name of the Game
  16. Don’t Shut Me Down
  17. I Still Have Faith in You
  18. Waterloo
  19. Money, Money, Money
  20. Thank You for the Music
  21. Dancing Queen
  22. The Winner Takes It All(アンコール)

1. 光の演出がすごい。

オープニング前はABBAの故郷スウェーデンなのか、林の中に雪がちらつくアニメーションが投影されていました。そこから360度方向のLEDが光り、目に残像を残し、観客の知覚を揺らすような演出がスタート。“これから現実ではないものを現実として受け入れてください”ということでしょうか。
盛り上がる観客の目と脳をチューニングしてから、ステージ床より若き日の4人の姿をしたが登場、
500台以上とも言われるムービングライトと、超巨大LEDウォールなど光の演出が細かく、
目の前のアバターは肉眼で見ると映像であることを忘れるほどのクオリティです

2. デジタルABBAが“本人に見える”理由

ABBA Voyageの肝は、正面ステージの若きABBAが目の前で歌って踊るだけではありません。
サイドスクリーンや映像演出が、“本人すぎて”、
途中でもう「本物」の意味がわからなくなってくることです。


実際には“脳では本物ではない”と知っているのに、光、カメラ、カット割り、バンドの生演奏、客席の熱量が揃うことで、“本物性”が成立してしまう。
もうAIの技術単体がどうとかではなく、「演出総合力がすごすぎるね」ということです。

3. MCの違和感が逆に効く

なんと公演の途中の各メンバーのMCがあります。ABBAターが軽快な冗談も飛ばします。
多くの観客が感じるのが、「これ、生なの?」という感覚です。Time Outも、完全な“リアルなライブの自発性”とは違うと指摘しつつ、それでも十分に成立していると評価しています。
つまりABBA Voyageは、ライブの偶然性を減らす代わりに、パッケージとしての完成度を最大化した作品です。ディズニーランドやユニバーサルスタジオのアトラクションに近いですね。

4. 超有名曲「Mamma Mia」「Gimme! Gimme! Gimme!」「Money, Money, Money」「Dancing Queen」の使い方がうまい

セットリストを見ると、ABBA Voyageはただヒット曲を並べているわけではありません。
前半で親しみやすい代表曲を入れて観客を掴み、中盤で映像・レーザー・衣装変化・物語パートを差し込み、終盤で“誰もが歌える曲”を一気に解放していきます“Money, Money, Money”から“Dancing Queen”までのラストの祝祭感は、曲の意味と演出をそのまま直結させる王道設計でした。
観客が求める色と曲の記号が一致しているので、強い!


5. 生バンドの存在が、すべてを成立させている

公式にもある通り、ABBA Voyageは10人編成の生バンドが全編を支えています。
この公演は、演出もすごいけど、低音の圧、ドラムのグルーヴ、コーラスの厚み、生演奏の空気振動があるからこそ、デジタルABBAが浮かず、会場全体がコンサートとして成立しているように思いました。制作視点で言えば、テクノロジーの主役は映像ではなく、映像と生演奏の同期設です。

ABBA Voyageを見て強く感じたのは、「本人がそこにいなくても、パッケージとして圧倒的なら観客は感動する」という事実です。もちろん、これは雑な意味での“代替可能”という話ではありません。むしろ逆で、本人不在を成立させるには、通常のライブ以上に細密な演出設計が必要だということです。

この作品は、ライブ、演劇、映像、常設興行、IP体験、観光コンテンツの境界をクロスオーバーしています。ロンドンの常設公演として成立しているのは、単にABBAが有名だからではなく、アクセスしやすい会場、明快な価格帯、仮装したくなる空気、100分で満足できる構成、そして“未来を見た”と感じさせる体験価値がセットになっているからで、「1回見たらいいかな」というラスベガスSpehereとの違いはここにありそうです。(ABBA Voyageのリピーター率が気になりますね)

ABBA Voyageは、

  • デジタル表現がどこまで“本人性”を獲得できるか
  • 生バンドと映像演出がどう融合すれば違和感を超えられるか
  • 客層・服装・アクセス・価格まで含めた“体験設計”がいかに重要か
    を、非常に高いレベルで可視化してくれる公演でした。

最先端の“2.5次元シアター”という言い方が正確かはさておき、
少なくとも、コンサートの次の形を見ることができたという感覚は確かにありました。
ロンドンでエンタメ視察をするなら、ABBA Voyageは単なる観光向けヒット作ではなく、今後のライブ制作や常設型エンターテインメントを考えるうえでの重要ケーススタディです。

数曲しかしらない私でさえ、チキチータしてマンマミーア歌って
最後は両手をあげてダンシングクイーンを歌いました。
観客みんなが楽しそうな空間って最高!

Triplegunsでは、海外公演、ライブ制作、展示会、常設型エンターテインメント視察などを通じて、
日本と海外をつなぐ現場支援を行っています。

ABBA Voyageのように、作品そのものの完成度だけでなく、
会場設計、導線、チケット設計、客層づくり、物販や飲食を含めた体験全体の設計が、
これからのエンターテインメントやイベントビジネスではますます重要になっていくと感じました。

海外でのライブ、公演、展示会、IPイベント、体験型コンテンツの展開を検討されている方は、
ぜひTriplegunsまでご相談ください。
現地制作・運営の視点から、実務に即した形でサポートいたします。